広背筋の使いすぎが姿勢を崩す?背中の“正しい使い方”

- 💎“背中の筋肉”と姿勢の関係を知ろう
- 💎なぜ“広背筋の使いすぎ”が姿勢を乱すのか?
- 💎正しい背中の使い方を身につける:ピラティス的アプローチ
- 💎ピラティスで背中の使い方を再教育する方法
- 💎解剖学的観点で見る、背中・姿勢・ピラティスが姿勢改善に有効な理由
背中を鍛えると姿勢が良くなる——多くの人がそう信じています。
しかし実は、背中の中でも特に大きな筋肉である「広背筋」が過剰に働きすぎることで、姿勢が崩れてしまうケースがとても多いのです。
広背筋は、腕を後ろに引く・身体を引き寄せるといった強い動きを担当する筋肉で、トレーニングや日常生活の癖で優位になりやすい特徴があります。
その結果、「巻き肩」「反り腰」「肩甲骨の外転」「胸郭の硬さ」「呼吸が浅い」といった、姿勢の乱れにつながる現象を引き起こします。
ここで大切なのは、背中は“鍛えるだけでは姿勢は整わない”ということ。
姿勢を整えるには、広背筋の「働きすぎ」を手放し、正しい背中の使い方——特に僧帽筋下部・菱形筋・多裂筋といった“姿勢を支える筋肉”を使えるようになる必要があります。
ピラティスはこの背中のバランスを整えるのに非常に優れたメソッドであり、正しく動く背中を再教育するための最適解としておすすめです。
本コラムでは、広背筋の使いすぎが姿勢をどう乱すのか、そして“正しく使える背中”へ導く方法を詳しく解説していきます。

背中の筋肉は「層構造」で働いている
背中には数多くの筋肉が存在し、その機能はとても複雑です。
一般的に“背中”と言うと広背筋や僧帽筋のイメージが強いですが、実際には浅層・中層・深層と3つの層で構成されています。
▼浅層(動きを作る大きな筋肉)
・広背筋
・僧帽筋(特に上部・中部)
これらは大きく、強い力を発揮する「ムーバー」としての役割があります。
腕を引く、肩甲骨を動かす、体幹を回すといった動作に強く関与します。
▼中層(肩甲骨を安定させる筋肉)
・菱形筋
・僧帽筋中部・下部
これらは肩甲骨を安定させ、良い姿勢を保つために非常に重要です。
▼深層(姿勢を支えるインナー筋)
・多裂筋
・回旋筋
・脊柱起立筋群
特に多裂筋は背骨をひとつずつ安定させる重要な筋肉で、ピラティスでよく登場します。
このように、背中は多層構造で働いているため、どれか一つの筋肉に負担が偏るとバランスはすぐに崩れます。
その中で強さを持つ広背筋が“代わりに働きすぎる”のは、姿勢問題の大きな要因となるのです。
姿勢維持に本当に必要なのは「背中のインナー」
姿勢が崩れる人の多くは、背中の“見えない筋肉”が使えていません。
特に弱くなりやすいのは次の3つ。
▼僧帽筋下部
肩甲骨を下方に安定させる筋肉で、肩がすくみやすい人には特に重要。
▼菱形筋
肩甲骨を内側に寄せ、胸を開くために必要。巻き肩の改善に直結します。
▼多裂筋(背骨のインナー)
背骨を1本ずつ支えるため、姿勢の“芯”になる筋肉。
これらが弱いと、広背筋が「本来の仕事ではない姿勢保持」まで担うことになり、過緊張を招きます。
広背筋の使いすぎで起こる姿勢の乱れ
広背筋は本来、“引く”“内旋する”動きが得意です。
しかし、これが姿勢の乱れにどう影響するのでしょうか?
✔ 巻き肩
広背筋は上腕骨を内旋させるため、過剰に働くと腕が内側へねじれ、肩が前へ入りやすくなります。
✔ 胸郭が閉じる
腕が内旋すると、胸が縮こまり、呼吸が浅くなります。
胸郭の広がりが減ると姿勢は一気に崩れます。
✔ 腰の反り
広背筋は骨盤にも付着しているため、緊張が強すぎると骨盤を前傾方向へ引き込みます。
結果、反り腰が助長されてしまいます。
✔ 肩甲骨が外側へ流れる
広背筋は肩甲骨を下に引く力が強いため、僧帽筋や菱形筋が弱いと肩甲骨が外へ引っ張られます。
✔ 呼吸の浅さ・疲れやすさ
胸郭の動きが制限され、呼吸筋が本来の働きを失うことで疲れやすくなります。
背中を鍛えているつもりが、逆に体を固めてしまう。
これが「広背筋を使いすぎる人」によく見られる現象です。
“使いすぎ”と“使わなすぎ”のバランス崩壊
広背筋ばかりが働いてしまう背景には、他の筋肉の“働かなさ”があります。
・僧帽筋下部の弱さ
・菱形筋の不活性
・胸椎の硬さ
・体幹インナーの不使用
これらはすべて広背筋に負担を押し付けてしまう原因です。
背中の問題は「広背筋の強さ」ではなく「バランスの悪さ」にあると言えるでしょう。
なぜ“広背筋の使いすぎ”が姿勢を乱すのか?

広背筋の本来の役割:強いけれど、姿勢を支える筋肉ではない
広背筋は背中の中でも特に大きく、パワーのある筋肉です。
そのため“使いやすい筋肉”であり、日常でもトレーニングでも無意識に働きやすい特徴があります。
しかし、この便利さこそが姿勢を乱す最大の原因となります。
ここでは広背筋の構造・働き・日常動作との関係・代償動作・筋膜ラインなど、立体的な視点で深く掘り下げていきます。
広背筋の主な役割は「大きな力を発揮して身体を引き寄せること」です。
具体的な機能は以下の通り。
• 上腕骨の内旋(腕を内側へねじる)
• 上腕骨の伸展(腕を後ろへ引く)
• 内転(腕を身体側へ引く)
• 肩甲骨を下方に引く
• 体幹の回旋の補助
これらはどれも“大きな動作”に関係する役割であり、「姿勢を維持する」仕事とは大きく異なります。
本来、姿勢保持はさらに繊細な筋肉
—僧帽筋下部、菱形筋、多裂筋、深部背筋群—
が担うべき仕事です。
広背筋は強く働く反面、“細かい制御”が苦手です。
そのため広背筋が姿勢保持を代わりに頑張ると、動きは大味になり、肩甲骨や胸郭が本来の位置から外れてしまいます。
なぜ現代人は広背筋を使いすぎるのか?
現代の生活習慣は、“広背筋を過剰に働かせる条件が揃っている”と言っても過言ではありません。
▼① 猫背・巻き肩姿勢が広背筋を優位にする
猫背の姿勢は、肩甲骨が外側へ広がる「外転」を強めます。
この外転位では僧帽筋中部・下部が働きづらくなり、代わりに広背筋が肩甲骨の位置を保とうとします。
つまり
本来使われるべき筋肉がサボる → 広背筋が肩甲骨の安定を代償する
という状態が生まれます。
▼② 腕を内巻きにして使う生活習慣
スマホを持つ、PC作業をする、バッグを持つ…
これらはすべて腕を内旋させる動作であり、広背筋の“内旋作用”が過剰に働く原因になります。
▼③ 運動習慣でも広背筋が優位になりやすい
・ローイング系
・懸垂
・ラットプルダウン
・腕立て伏せの代償動作
これらは広背筋が強く働く典型的な動作です。
フォームが崩れたまま続ければ、広背筋だけがどんどん強くなり、姿勢を整える筋肉が使われなくなってしまいます。
▼④ 胸郭の低下と呼吸パターンの乱れ
広背筋は胸郭を下に引く働きがあります。
胸郭が広がらず、呼吸が浅い人ほど、広背筋の緊張が強まりやすい傾向があります。
広背筋の過活動が姿勢に与える“4つの悪影響”
① 巻き肩を助長する
広背筋の内旋作用が強まると、上腕骨が前に回され、肩が内に巻きやすくなります。
この状態では胸郭が閉じて呼吸が浅くなり、姿勢の土台が崩れます。
② 肩甲骨の正しい動きを妨げる
肩甲骨は本来、
・内転
・外転
・挙上
・下制
・上方回旋
・下方回旋
のように立体的に動きます。
しかし広背筋は「下制」方向に強く働くため、肩甲骨が下に引っ張られすぎる状態が起こり、肩甲骨の動きに制限が生じます。
③ 腰の反り(前傾)を強める
広背筋は骨盤の後ろ側(腸骨稜)に付着しています。
このため、強く緊張すると腰椎を引っ張り、骨盤前傾を過剰にする傾向があります。
結果、
・反り腰
・腰痛
・背骨のS字カーブの崩れ
を引き起こします。
④ 胸郭の動きを抑え、呼吸を浅くする
広背筋は胸郭を下に押し付ける方向に働くため、胸式呼吸がしづらくなり、呼吸筋の機能低下を招きます。
呼吸が浅い人は、広背筋が過剰に働いている可能性が高いのです。
“筋膜ライン”から見た広背筋と姿勢の関係
筋膜のつながりで見ると、広背筋の影響は背中だけに留まりません。
▼スーパーシャローバックライン(浅背面ライン)
このラインは
後頭部 → 背中 → ハムストリング → ふくらはぎ → 足裏
まで続きます。
広背筋の緊張は、このライン全体に影響し、
・首コリ
・腰痛
・脚の張り
などを引き起こす可能性があります。
▼ディープフロントライン(深層前面ライン)との拮抗
広背筋は深層前面ライン(横隔膜・腸腰筋など)と拮抗関係にあります。
広背筋が強すぎると、前面ラインが働けず、姿勢はますます崩れます。
広背筋の使いすぎを生む“代償動作”
正しく姿勢を支える筋肉が働かないと、身体は最も強い筋肉を使って補います。
これが代償です。
代償の典型例
・胸椎の伸展 → 広背筋で代償
・肩甲骨の内転 → 広背筋で下に引く
・体幹の安定 → 広背筋で固定
本来働くべき
・僧帽筋下部
・菱形筋
・多裂筋
・前鋸筋
これらが働かないことで広背筋が疲労し、姿勢が崩れ続けます。
ピラティスで“広背筋の使いすぎ”が整う理由
ピラティスは、
「使いすぎている筋肉を手放し、使われていない筋肉を目覚めさせる」
という再教育のメソッドです。
✔ 呼吸で胸郭を広げる
胸郭が開くと広背筋の緊張が自然に緩和されます。
✔ 背骨の分節運動で多裂筋を活性化
背骨の一つ一つを動かす動作は、多裂筋を目覚めさせ、広背筋の働きを抑えます。
✔ 肩甲骨の安定化エクササイズ
僧帽筋下部・菱形筋が働き、肩甲骨が正しい位置に戻ります。
✔ 上腕骨の正しい動き(外旋)
上腕骨を外旋させるキューにより、広背筋の内旋作用を抑えます。
広背筋は悪者ではありません。
ただし“常に出しゃばりすぎる”ことで、姿勢を崩す原因になるのです。
ピラティスはそのバランスを整える理想的な方法なのです。
正しい背中の使い方を身につける:ピラティス的アプローチ

まずは“体幹の軸”を整える:背中を使うための土台づくり
姿勢を整えるためには「背中を鍛えること」ではなく、背中を正しく使うことが不可欠です。
広背筋の使いすぎが姿勢を崩す理由を理解した上で、ここからは「どの筋肉を使い、どの筋肉を休ませるべきなのか?」を、ピラティス的アプローチで深掘りしていきます。
ピラティスは単なる筋トレではなく、体の使い方を再教育するメソッドです。
その特徴が「背中の誤使用」を正しくリセットし、“正しく使える背中”を育ててくれます。
正しい背中の使い方のスタート地点は、実は「背中」ではありません。
背中を正しく使うためには、まず
体幹(特にインナー)が働くこと
が必要です。
インナーとは、
・横隔膜
・腹横筋
・骨盤底筋
・多裂筋
の4つの深層筋で、これらが連携して働くことで、背骨が内側から引き上がり、姿勢の“軸”が作られます。
広背筋が使いすぎる人の多くは、この体幹がまったく働いていないか、弱い傾向があります。
体幹が働かない状態で背中を使おうとすると、広背筋という「強くて大きい筋肉」が代わりに働いてしまい、背中のバランスがさらに悪化します。
▼ピラティスの呼吸が背中の緊張を整える
ピラティスでは肋骨の横・後ろに呼吸を広げる胸式呼吸を使います。
これによって
・胸郭の動きが改善
・横隔膜が正しく働く
・背骨が縦に伸びる
・広背筋の緊張が勝手に抜ける
といった変化が起きます。
インナーが働くと背中が軽くなり、「肩で頑張らない姿勢」が自然と作れるようになります。
“広背筋ではなく”使うべき筋を目覚めさせる
では、背中を正しく使うためにどの筋肉を優先的に働かせるべきか?
答えは次の3つです。
① 僧帽筋下部
肩甲骨を下げ、胸を開き、背骨の上に肩を正しく乗せる筋肉。
広背筋は肩甲骨を“下に引きすぎる”傾向があるため、僧帽筋下部が働くとその過剰な下制を防ぎます。
② 菱形筋
肩甲骨を内側へ寄せる役割。
巻き肩改善に最も効果的で、広背筋が肩甲骨を外に引っ張るクセを中和します。
③ 多裂筋(背骨のインナー)
背骨の安定性の中心。
「背中が固まる」「腰が反る」という症状は、広背筋の過活動+多裂筋の不活性がセットで起こっています。
多裂筋が働くと、広背筋が頑張る必要がなくなるのです。
▼ピラティスの代表的エクササイズ
・Swan Prep
・Breast Stroke Prep
・Scapula Retraction
・Wアームポジション
・胸椎のエクステンション
これらはすべて「背中のインナー筋」が主役になるよう設計されています。
広背筋は一旦“おやすみ”してもらい、必要な筋肉に光を当てること。
これが背中の機能的再教育に必要なステップです。
頭・胸郭・骨盤の“位置関係”が背中の使い方を決める
背中は単独の部位ではありません。
頭・胸郭・骨盤の配置が整ってこそ、背中は正しく使えるようになります。
▼頭が前に出れば背中は固まる
頭が前方にずれると、首の筋肉が働き、広背筋が肩甲骨を下に引きつけようとします。
その結果、背中がカチッと固まり、呼吸が浅くなります。
▼胸郭が硬ければ背中は動けない
胸郭の動きは背中の動きと密接に関係しています。
胸郭が硬いと胸椎が動けず、背中の深層筋が働きません。
ピラティスでは胸郭の動きを重視し、胸椎が滑らかに動くことで背中の筋活動が正常化されます。
▼骨盤が傾けば背中は代償する
骨盤前傾=広背筋の過活動
骨盤後傾=僧帽筋の弱化
という関係があります。
骨盤の傾きは背中の筋バランスに直結するため、ピラティスでは骨盤のニュートラルを最初に整えます。
日常でできる「背中の正しい使い方」チェックポイント
背中は日常動作で無意識に使われる部位です。
だからこそ、日常での使い方のクセを変えることが最も重要。
✔ 肩を後ろへ引きすぎない
「胸を張る」は広背筋を過剰に使う姿勢。
肩は軽く後ろ・下にセットする程度がベスト。
✔ 腕を後ろに引いて歩かない
歩行時に腕を後ろに引きすぎると、広背筋がゴリゴリ働きます。
腕は“前後に揺れる”程度で十分。
✔ 呼吸で背中を広げる
背中に呼吸を入れることで、多裂筋が目覚め、広背筋の緊張が和らぎます。
✔ 背中を「反らせて使わない」
反る=広背筋が強く働く合図。
胸椎を伸ばす意識に切り替えることで、背中が滑らかに動くようになります。
ピラティスは“背中を鍛える”のではなく、“背中を解放する”
多くの人は「背中を鍛えたい」と言いますが、実はピラティスはその逆。
広背筋が頑張りすぎている背中は、まず解放することが必要です。
背中を解放すると初めて、
・肩甲骨が正しく動き
・呼吸が深くなり
・胸郭が開き
・多裂筋が働き
・姿勢が軽くなる
という、一連の改善が起こります。
ピラティスはこの「解放 → 活性化 → 再教育」のプロセスが非常に得意で、背中の使い方を根本から変えてくれるメソッドなのです。
ピラティスで背中の使い方を再教育する方法

マットピラティス:広背筋を“休ませ”、背中のインナーを呼び起こすステップ
広背筋が使いすぎている状態を改善するには、単に「広背筋を鍛えないようにする」だけでは不十分です。
背中の筋肉は複雑に重なり合い、胸郭・肩甲骨・骨盤・呼吸・体幹の働きと深く結びついているため、背中全体の使い方を“根本から再教育する”必要があります。
ピラティスはまさにこの再教育に特化したメソッドです。
ここでは、マット・マシン・日常動作と段階的に背中の使い方を整えていくアプローチを、解剖学的視点を交えながら詳しく解説していきます。
マットピラティスは、広背筋優位な身体を再教育するための最初のステップです。
なぜなら、マットは身体を床に預けるため
「広背筋を固定筋として使うクセ」を一度オフにできる
特徴があるからです。
▼① 床に預けることで余計な緊張を手放せる
仰向けの姿勢では、腕や肩甲骨が重力から解放され、必要以上に肩を引き下げたり、背中を固めたりするクセが出にくくなります。
広背筋過活動の人に多い「肩甲骨を下に押しつける」癖も自然に抜けます。
▼② 肋骨・胸郭の動きが出てくる
背中を床に置くことで、呼吸が胸郭の後方に入りやすくなり、多裂筋が働き始めます。
横隔膜が正しく動くと、背骨の縦の伸びが生まれ、広背筋が頑張る必要がなくなります。
▼③ マットだからこそ感覚が育つ
・腕を下げる
・肩甲骨を安定させる
・胸椎を伸ばす
これらの細かい操作は、道具がないからこそ身体感覚を育てる練習になります。
▼代表的なマットエクササイズ
・Scapula Retraction(肩甲骨セット)
・Chest Lift(胸椎屈曲の基礎)
・Swan Prep(胸椎伸展で多裂筋を活性化)
・Arm Circles(肩甲骨の安定化)
・Breathing with Rib Expansion(肋骨の可動性改善)
特にSwan Prepは、「胸を反らす」のではなく「胸椎をひとつずつ伸ばす」ことで、多裂筋・僧帽筋下部を目覚めさせる優れたエクササイズです。
肩甲骨・胸郭・背骨の連動を再学習する
マットで背中の余計な緊張が抜けてきたら、次はリフォーマーで
「動きの中で背中を整える」ステージへ進みます。
リフォーマーの最大の特徴は、
スプリング抵抗が“広背筋の暴走”を抑えてくれる
点にあります。
▼① スプリングのおかげで“引きすぎ”ができない
広背筋は“引く動き”が大得意ですが、リフォーマーは引く方向に抵抗があるため、腕や肩の過剰使用を防ぎやすくなります。
▼② 肩甲骨の安定化が整いやすい
リフォーマーでは、
・僧帽筋下部
・菱形筋
・前鋸筋
など、肩甲骨を正しい位置に保つ筋肉が自然と働きます。
広背筋が強い人ほど、肩甲骨を「下制」しすぎますが、
正しくは
肩甲骨は軽く下がりつつ、胸郭に沿って滑らかに動くこと
が理想です。
▼③ 胸椎が伸びる → 広背筋が相対的に休まる
胸椎の伸展が出てくると、広背筋の“固定筋としての働き”が抜けていきます。
胸椎が固いと、広背筋が代わりに頑張り始めるため、胸椎伸展は非常に重要です。
▼代表的なリフォーマーエクササイズ
・Pulling Straps(僧帽筋下部を使う)
・Back Rowing(胸郭と肩甲骨の連動)
・Long Box でのSwan(胸椎伸展と多裂筋)
・Arms in Straps(腕の引き過ぎ防止・肩の再教育)
・Mermaid(胸郭の立体的な動き)
Pulling Strapsは、見た目は“背中のエクササイズ”ですが、実際の主役は僧帽筋中部・下部であり、広背筋が過剰に働かないよう設計されています。
正しい背中の使い方を“定着”させるためのプログラム
正しい動きは、数回のレッスンでは定着しません。
背中の再教育には、
段階 × 継続 × 神経系の再学習
この3つの掛け合わせが重要です。
▼① 初期(2〜4週間):広背筋の緊張を抜く
・呼吸
・胸郭の動き
・肩甲骨の安定化
・広背筋の過剰下制の修正
マット中心で、正しい位置を“再発見”していきます。
▼② 中期(4〜8週間):背中のインナーを強化
・多裂筋
・僧帽筋下部
・菱形筋
・前鋸筋
をリフォーマーで順に目覚めさせ、正しい運動連鎖を学びます。
▼③ 後期(8〜12週間):日常動作に落とし込む
・歩く
・座る
・立つ
・ものを持つ
・階段を上る
これらの日常動作の中で背中を正しく使えるように再学習します。
神経系の働きが整い、脳が“正しい背中の使い方”を記憶していきます。
背中の使い方で“絶対にやってはいけないこと”
背中を整えたい人がつい陥るNG動作があります。
これを避けるだけで広背筋の過活動をかなり防げます。
❌① 胸を張る・肩を後ろに引きすぎる
これは広背筋の“反りグセ”を強め、胸郭をつぶします。
❌② 肩甲骨を強く下げる
「肩を下げろ」は昔の指導。
今は「肩甲骨は下げすぎず、胸郭に沿わせる」が正解です。
❌③ 腕を後ろに引くクセ
歩行時に腕を強く後ろへ振る人は広背筋が常に働いています。
❌④ 息を止めて背中を固める
呼吸は背中再教育のカギ。
息を止めると横隔膜が働かず、広背筋に緊張が戻ります。
ピラティスで背中が変わる理由:動きの“再教育”に特化しているから
背中を整えるもっとも重要なポイントは、
「筋トレでは変わらない」
という事実です。
必要なのは:
・神経の再学習
・胸郭の柔軟性
・呼吸
・肩甲骨の動き
・背骨の連動
・インナーの働き
ピラティスはこれらすべてを“動きの中で”改善するメソッドです。
その総合性こそが、背中の機能改善に向いている最大の理由です。
解剖学的観点で見る、背中・姿勢・ピラティスが姿勢改善に有効な理由

広背筋・僧帽筋・菱形筋・多裂筋:姿勢に関わる“背中の4大筋群”
背中の使い方を整えるには、筋肉だけでなく、骨格・関節・神経・筋膜まで含めた総合的な視点が欠かせません。
広背筋の使いすぎは「筋肉の問題」だけでなく、「筋膜の張力バランス」「神経の働き」「胸郭の柔軟性」「姿勢制御システム全体」が複雑に影響し合って生じます。
ピラティスは、これら複数の要素を一度に整えることができるメソッドです。
なぜそれが可能なのか?
その理由を解剖学・生体力学・神経科学的に紐解いていきます。
背中の姿勢を支える主役は広背筋ではありません。
姿勢に直接的に関わるのは以下の4つの筋群です。
▼① 広背筋
・腕を後ろへ引く
・腕を内旋する
・肩甲骨を下制する
・胸郭を下げる
大きな力を出す筋肉ですが、姿勢保持には向いていません。
過活動になると、反り腰・巻き肩・胸郭の硬さを助長します。
▼② 僧帽筋(特に中部・下部)
肩甲骨の正しい位置を保つための“最重要筋”。
僧帽筋下部が弱いと、肩甲骨が外へ広がり、胸郭がつぶれ、背中のインナーが働けなくなります。
▼③ 菱形筋
肩甲骨を内側へ引き寄せる筋肉。
広背筋の外転作用のアンチ役として機能します。
また、胸を自然に開くために欠かせません。
▼④ 多裂筋(背骨のインナー)
背骨の1本1本を安定させる“縦の柱”。
多裂筋は、広背筋と同じ胸腰筋膜につながっているため、多裂筋が働くと広背筋硬さが自然に緩む特徴があります。
▼なぜ広背筋が“悪者扱い”されやすいのか
広背筋には強さがあるため、
「僧帽筋や菱形筋が弱いと代わりに働いてしまう」
という特徴があります。
強い筋肉が弱い筋肉の仕事を奪うと、動きの偏り=姿勢の乱れが起こります。
背中を理解するには筋膜ラインが不可欠
筋膜は筋肉同士をつなぐ“ボディスーツ”のような組織であり、筋肉の単体の働きよりも、全体のつながりを理解するほうが正確です。
▼スーパーシャローバックライン(浅背面ライン)
後頭部 → 背中 → 腰 → ハムストリング → ふくらはぎ → 足裏
まで続くラインで、広背筋もこのライン上に位置します。
広背筋の緊張は、このライン全体に影響し、
・首の張り
・腰の反り
・脚の張り
・足裏の硬さ
など全身の姿勢バランスを崩します。
▼深層前面ライン(ディープフロントライン)との拮抗関係
広背筋は前面ラインの
・横隔膜
・腸腰筋
と拮抗関係にあります。
つまり広背筋が強すぎる人は、深層前面ラインが働きにくい=呼吸・体幹が弱い状態です。
ピラティスが横隔膜・骨盤底筋を最初に整えるのは、広背筋の過活動を“正しく抑えるため”でもあります。
姿勢は「重力下での神経制御」:筋肉よりも重要な要素
姿勢制御を決めるのは筋肉の強さではなく、以下の3つの神経系です。
▼① 固有受容(身体の位置を感じるセンサー)
姿勢が悪い人は、
・肩がすくんでいる状態
・腰が反っている状態
・肩が内巻きの状態
を“ニュートラル”だと勘違いしています。
ピラティスではゆっくりした動き・正確なアライメントで固有受容器を再教育し、身体の位置感覚が「正常値」に戻ります。
▼② 前庭系(バランス感覚)
背中の緊張が強いと、目線も頭の位置も不安定になり、前庭系の機能が低下します。
ピラティスの連動性のある動きは、頭・胸郭・骨盤の位置を整え、バランス感覚を改善します。
▼③ 運動学習(反復による神経回路の書き換え)
筋トレは筋肉を強くしますが、ピラティスは“脳の動きの記憶”を変えます。
これが背中の使い方が根本から変わる理由です。
ピラティスが背中の機能改善に“強い”5つの理由
解剖学的視点で見ると、ピラティスが姿勢改善に強い理由は明確です。
① 使いすぎの筋肉をオフにできる
広背筋・僧帽筋上部などの過活動を、
・呼吸
・胸郭の動き
・ニュートラルポジション
によって自然に手放すことができます。
② インナー筋が目覚める
多裂筋・骨盤底筋・横隔膜・腹横筋が連動することで、背骨と胸郭が安定します。
③ 肩甲骨・胸郭・背骨の連動が回復する
背中は単体で動くのではなく、胸郭・肩甲骨との連動性が命。
これを最も効率よく再教育できるのがピラティスです。
④ 呼吸が背中を柔らかくする
呼吸の際に肋骨が立体的に動くことで、胸郭が広がり、背中の深層筋が働きます。
⑤ 神経系の学習が改善される
動き方そのものが脳に書き込まれ、姿勢が習慣として定着します。
だからピラティスは「背中の使い方の再教育」に最適!
広背筋の使いすぎは、筋肉単体の問題ではなく、
・胸郭の柔軟性
・肩甲骨の安定性
・背骨の可動性
・呼吸
・筋膜ライン
・神経系の制御
など、全身の要素が複雑に絡み合って生じます。
ピラティスは、このすべてを同時に整えることができる数少ないメソッドです。
だからこそ、背中の機能改善・姿勢改善に高い効果を発揮します。
継続することで“姿勢を支える身体”になる
ピラティスは単なる筋トレではなく「動きの再教育」です。
正しい位置で動く感覚が積み重なることで、日常生活でも自然と頭が正しい位置に戻るようになります。
これがピラティスが姿勢改善に非常に強い理由であり、年齢問わず効果が出やすい理由です
広背筋の使いすぎによる姿勢の乱れは、現代人に非常に多く見られる問題です。
背中は本来、多層の筋肉が連携して働くことで、肩甲骨の安定・胸郭の広がり・背骨の支えを生み出します。
しかし、胸郭の硬さ・インナーの不活性・猫背姿勢・日常動作のクセなどにより、最も力の強い広背筋が過剰に働き、肩が内巻きになり、腰が反り、呼吸が浅くなるなどの姿勢トラブルにつながります。
ピラティスは、このバランスの崩れを根本から整えるメソッドです。
呼吸によって胸郭を柔らかくし、体幹のインナーを目覚めさせ、肩甲骨・胸郭・背骨の連動を取り戻すことで、広背筋が本来の役割に戻っていきます。
また、ゆっくりと丁寧に動くことで、筋肉だけでなく「神経系」にまで働きかけ、正しい動きのパターンが身体に深く定着します。
背中を“鍛える”のではなく、“正しく使える背中”へ。
そのアプローチこそが姿勢改善の本質であり、ピラティスが多くの人に支持されている理由です。
今日から背中の意識を一つ変えるだけで、あなたの姿勢は変わり始めます。
ピラティスで、しなやかで軽やかに動く背中を一緒につくっていきましょう。
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完全個別のマンツーマン指導:一人一人の体に合わせたパーソナルピラティスで理想の結果へ導きます。
姿勢改善・体幹強化・ダイエット:お客様の目標に合わせたプログラムをカスタマイズ。
初心者でも安心:経験豊富なインストラクターが丁寧にサポートします。
大森、大森駅近くでパーソナルピラティスを体験したい方に最適な環境が整っていますよ。
【こんな方におすすめです!】
①美しく健康的な体づくりをしたい方
②大森・大森駅近くで通いやすい「パーソナルピラティス」スタジオをお探しの方
③姿勢改善や体幹を強化したい方
④運動が苦手な初心者の方でも安心して始められます!
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